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螺旋特急ロストレイルに登録しているキャラクター背後のブログです
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カテゴリの選択で、レイエンの日常にするかシェリダンの苦労話にするか悩んだのですが、結局シェリダンの苦労話にしました。おそらくシェリダンが主体なので。
でも一応、レイエンの戦闘シーンは珍しいということで、レイエンの方のカテゴリにも上げておきます。


瓦礫の影で、シェリダンは大きく息をついた。
隠れてもムダということはわかっているのだが、気分的な問題だ。
そもそも、己の作ったものの全てを把握できる者に対すること事態が無謀なのだが、自分で頼んだ限り精一杯やるしかない。そのまま耳を澄ますように感覚を広げると、人間をはるかに越えて鋭敏な五感が周囲の情報を余すところなく伝えてくる。
しかし、視野の外までわかる気配の中に、求めるものはない。
「疲れたかい?」
唐突に至近距離で聞こえた穏やかな声音に、咄嗟に炎弾を放ちつつ飛び退いた。

炎弾を軽やかにかわした青銀の影が視認できない速度で追いすがる。
「くっ・・・!」
地を蹴って、感覚の隅に引っ掛かった方向に魔力を放って捻じ曲げる。捻じ曲げられた空気が悲鳴をあげて真空の波を作り出した。
「いい攻撃だね」
纏った衣の裾を少しばかり切られたレイエンの右手がふっ、と消えた。突風が巻き起こり、シェリダンは吹き飛ばされながら爆音を聞いた。右手を音速を超えて動かしたのだ。その衝撃で何度も吹き飛ばされている。
逆さまになった街に手を差し伸べる。前触れもなく石柱が何本も突き出し、レイエンを襲うが踊るように石柱の上に乗るレイエンは穏やかな微笑を崩さない。
街に差し伸べていた手をぐっと握ると猛烈な勢いで石柱がレイエンを覆いつくした。ぎちぎちと締め上げる石の群れに包まれて、並みの生物ならとうの昔に潰されて原形すらとどめないだろうその中から、まったく堪えた様子のないたおやかな腕が突き出し、体に降りかかった枯れ葉を掃うがごとく岩を砕く。
その隙に着地したシェリダンは、砂利の上に手をかざして剣をイメージした。瞬く間に剣がシェリダンの手に握られている。
シェリダンが吹き飛ばされてから着地するまでのほんの僅かな間に交わされた攻防は、人知を超えている。
構えるシェリダンの、美しい臙脂色の半ば透き通って捩れた角から紫電がぴりぴりと奔る。
「慣れてきたかな?」
髪の毛一筋たりともダメージを負っていないレイエンは、人間であれば軽く数十回は死んでいる攻撃を喰らっている。ぎちぎちと軋んで締め上げてくる岩を片手で軽く叩くようにすると、岩はその軽い仕草に似合わない重い音を立てて砕けた。少し汚れた衣を翻してシェリダンに向き直る。
全く、レベルが違う。
シェリダンはそう考えつつ剣を構えた。

そもそも争いの嫌いなレイエンを「練習相手」に選んだのはそれくらいしかちょうどいい相手が思いつかなかったからだが、流石に力の使い方を覚えなくてはと最近毎日のように思っていたことを知っていたのだろうか。
「練習」という名の戦いを了承してくれたのは、意外だった。
レイエンは己の子供たち――被造物が争うのを何より嫌うのだ。大きな戦争の末に壊れてしまった世界、失われた生、それらをどうすることも出来ず眺めていることしかできなかった、世界の創造者。
だからだろうか、レイエンは争いを嫌う。
そのことを知っていたシェリダンは、己の力を使いこなすための戦闘をしたいと申し出て了承されるわけがないと思い込んでいた。言ってみるだけ、の気分だったのだ。
だから、レイエンがその硝子細工のような美貌を憂いに染めつつも頷いた時は、後悔すると同時にひどく驚いた。やはり悲しい顔をさせてしまったな、という罪悪感と、まさか、という驚愕だ。
「己の力をコントロールできないというのは、ときに大きな不幸を招くからね」
こうして、レイエンが作り出した限定並行世界(形は同じだが、生物のいない全く違う世界)で【修行】することになったのだ。
戦闘を始めてすぐ、レイエンという世界の創造者を相手取るということがどんなに無謀なことか思い知ったワケだが。

「ふっ」
鋭く息を吐いて足を踏み出した。下段から風を切り裂いて肉薄する剣を素手で受け止め、レイエンは瞬きをする。次の瞬間にはシェリダンがいた空間を巨大な木が埋め尽くしている。
間一髪で逃れ損ねた剣先が木に飲み込まれて折れる前に、シェリダンは魔力を流し込んで剣を振るう。木片になった巨木の向こう側に煌く青銀を見たと思った時には既に後ろに気配が移動している。
振り返る前に紫電がその空間をひと撫でするが、手応えはない。
突然手にした剣に凄まじい負荷がかかり、剣が手を離れると同時にはじけ飛ぶ。
「ちっ・・・」
剣を奪われそうになり大小無数の破片に変えたのは自分だが、その破片が襲う筈だったレイエンは、一体どうやったものかその破片を全てシェリダンに返してきた。思わず顔を手で庇うが破片の一つが頬を浅く切り裂く。
「―――シェリダン」
「!」
いつの間にか目前にレイエンの麗しい顔がある。
状況にそぐわないほど優しく、心配げな表情を浮かべたその美貌は、こんな状態に関わらず見惚れてしまうほど神々しく美しい。しかも鼻先が触れ合いそうなほどのドアップとくれば、幸せのあまり昇天してしまう者もいるんじゃなかろうかとシェリダンは現実逃避気味に思った。
レイエンは、シェリダンに隙があろうとなかろうと、自分から直接的に仕掛けることはない。隙のあるなしはレイエンには関係がないからだ。レイエンが本気で仕掛けようと思えば、隙がなくてもあっても同じこと。
己の作り出した世界において万能であるということは、つまりはそういうことなのだ。
レイエンの美貌に少しばかり免疫のあるシェリダンは漸く己を取り戻すと、手刀を繰り出す。充分すぎるほどの鋭さののったそれをレイエンは軽く受け止めシェリダンの手首を握ると、その角に触れる。紫電がレイエンの体に向かう前に、ばらりと角が「ほどけ」た。
「っ!?」
がくりと身体が沈み、シェリダンは己の体に力が入らないことに驚愕する。臙脂色の渦を手の上に浮かべたレイエンが、そっと微笑んで言った。
「今はここまでにしておいた方が良いよ」
「・・・・・そうか」
頬の血を手の甲で拭うと、その浅黒い肌にはもう傷など跡形もない。
痛みの消えた頬を、シェリダンは複雑な顔で撫でる。
「角が弱点だね。衝撃を与えられると力が抜けるだろう?」
「ああ。角が弱点、か。まさに主人公に倒されるモンスターだな。こんなにはっきりした弱点があるとは」
人間という主人公から魔王という化物に堕とされた男は、自嘲気味に笑う。
「主人公とは、誰がなるものでもないよ。全ての人生において主人公は自分なのだから」
臙脂色の渦をシェリダンの角に戻しながらレイエンが言った言葉に、角が戻って脱力感から開放されたはずのシェリダンは精神的に脱力した。眉間を押さえて何とか声を絞り出す。
「・・・・・・・・わかったから、そういうクサイ台詞を真面目な顔をして言わないでくれ・・・」
「すまないね、構成を分解なんて手荒なことをして」
「待て、その説明じゃ何がなんだかわからないというかその前に我の突っ込みはスルーか」
「構成を分解というのはね、物質の存在そのものの構成をバラバラにしてしまうことだよ。その時に、バラバラにした元素をひとところに留めておくと、再構成もしやすいんだけれどね。まあ、ひとところに留めておかなかったら世界に散ってしまうのだけど、また世界の中から散っていった元素を探し出して再構築することも出来るよ。ただ、それはすごく骨が折れるけどね」
微かに首を傾げて言葉をさがすように説明するレイエンに、シェリダンは諦めきった声をあげる。
「スルーなのか・・・まあいい、わかったようなわからないような説明をどうも」

「さて・・・じゃあシェリダン、思いっきり力を使ってみてごらん」
「・・・?どういう風にだ」
「それは君の思うとおりにするといい」
言われてシェリダンは周囲を見回した。破壊された市街。しかし動くものはなにもない。
当然だ。ここはレイエンの作った、無機物だけのまち。シェリダンの戦闘訓練のためだけに作り出したフィールド。
「・・・・・」
シェリダンは背筋を伸ばして立ち、両手を真っ直ぐ上に上げた。
未だ慣れない力を、両手の先に集中させる。力が流れていく感覚。
掌が焼けるように熱い。
「・・・く」
まだだ。
まだ、全力には足りない。
集中、する。
腕が重い。倦怠感がじわりじわりと身体を包むような・・・
「シェリダン。それ以上力を込めると命まで削ってしまうよ」
いつの間にか寿命を縮めるところだったようだ。本当に、この力は加減が難しい。
「―――――!!!!」
鋭く叫んで力を開放する。凝縮されていた力は一気に解き放たれ、紅い光が爆発的な熱量でもって周囲を一掃した。轟音。轟音。轟音。流星のように降り注ぐ光線は留まるところを知らず、繰り返し世界を破壊する。
シェリダンの鮮血のような色の瞳が、その破壊を哀しげに見つめる。人間であったことを捨てきれない未練が、疼く。耳を塞ぎたくなるような衝動を抑えて、彼は目を伏せた。

一面見渡す限りの焼け野原。
地平線まで見える見晴らしの良さに、レイエンがおやおやと呟いた。
「シェリダンはどうも、魔法というものにこだわっているようだね。」
人間だった頃の癖がまだ抜けないようだ、とは言わない。それは、シェリダンには酷な言葉だ。
「いいかい、魔力を単体で使う必要はないんだよ。たとえば、そうだね、身体の強化に使ってもいい」
魔力を身体に纏わずに、単体で魔法のように使う。それは、人間の戦い方だ。纏う魔力に身体がついていけない、弱い身体を持つ種族の戦い方。シェリダンは、もう人間ではない。ならば、それ相応の戦い方を覚えなければならない。己の力を使いこなしたいというのなら尚更。
「身体の強化?」
「そうだよ。シェリダン、自分の身体に魔力を纏ってみたことは?」
「ないが」
「やってみてご覧。自分の身体の隅々、筋肉、骨、内臓、神経、脳、全てに」
「・・・わかった」
「それができたら、こういう風に力を使うことも出来る」
レイエンが足を軽く上げ、少し速度を上げて地面に足を落とした。
ゴココ・・・
地鳴りと共に地面が陥没する。
「いわゆる怪力、速度の向上、そしてそれに意識と神経が追いつけるようになるんだけれど」
でも今日は本当にここまでだから、と付け足す。
「感覚の拡散くらいなら家でも練習出来ると思うよ。でもあんまり知覚を広げすぎると身体に戻れなくなるから、ほどほどにね」
「ああ・・・ありがとう」
言うと、レイエンはくすぐったそうに笑った。月光のように透き通ったその艶麗な笑みはやはりとても優しくて、シェリダンも自然に微笑んだ。
「次は、今度仲良くなった人を連れてきてあげるよ」
ほんわりと笑ったレイエンの「仲良くなった人」と後日会ったシェリダンは、なんでいつもまともじゃない奴と仲良くなるんだと内心ものすごい勢いで脱力したとか。



ワーイ!やっぱり最後で力尽きました!でもレイエンの「仲良くなった人」が実はダストだったりするので、のちのちシェリダンとダストの戦闘シーンを書く予定。
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