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螺旋特急ロストレイルに登録しているキャラクター背後のブログです
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世界の創造者、レイエン・クーリドゥの毎日は銀幕市観光だ。

朝、起きてきた鳥に柔らかなまなざしを向けていることもあれば、人の作った建物を興味深げに眺めていることもあれば、途切れることのない人並みに愛情に溢れた笑みを向けていることもある。
街の建物の並びに感心した目を向け、道路標識の前にいつまでも突っ立っていてじいっと見つめていることもある。様々なムービースターが通るたびに興味深げに目を細め、エキストラが通るたびに微笑む。ムービーファンが現れると、その肩に乗っているバッキーをいつもいつまでも眺めている。
彼がゆったりと歩けば地面近くまで流れ落ちる透き通った青銀の髪に、通りかかった猫がじゃれることもある。
そして、そういう場合は大抵、気の済むまで遊ばせてやってから流麗な動作で猫を抱き上げ、まるで我が子を抱いているかのような慈愛に満ちた表情でまた、ゆっくりと歩き出すのだ。
優しく抱かれた猫は、そのまま寝入ってしまうことも少なくない。
時折遭遇する子供たち―――ランドセルというものを背負っているからには小学生なのだろう、元気一杯、はちきれんばかりのエネルギーをきらきらとした両眼に宿したヒトの子供たちが、彼を見つけると警戒する様子もなく集まってくる。
「知らない人にはついてっちゃダメ」と母親に必ず言い含められているらしいこの世界の子供たちがなぜ見知らぬ自分に集まってくるのか、疑問に思ったことはあったが、世界の全てが愛しくてたまらない彼には、理由などどうでもよくなってしまった。

実際は、猫を大切そうにかき抱いて、ひどく優しいまなざしの麗人が、とても大きな―――母親のような存在感を備えていたからなのであるが。

「あっ!またネコちゃんがいる!ねぇ、抱かせて抱かせてー!」
「シーッ、何言ってんだよ、寝てるじゃん!」
「いいなぁ・・・ネコちゃん・・・」

あっという間に彼を取り囲み小鳥のように騒ぎ立てる子供たちを優しく見回して、レイエンはそっと唇に人差し指をあてる。

「今は、この子は寝ているから、また後でね。君たちも、寝ているところをいきなり起こされたらびっくりするだろう?」

互いに顔を見合わせて「シーッ」と囁いた子供たちに、彼はふわりと微笑む。
ああ、なぜこんなにも、生き物が愛しいのだろう。
その綺麗な笑顔に子供たちがぼうっと見惚れているのにも気付かず、一人一人頭を優しく撫でていく。
頭を撫でられてきゃらきゃらと笑ったりはにかむように笑う、嬉しそうな様子に、彼もまた嬉しくなる。

「いいな、ネコちゃん抱っこしてもらって・・・」

上目遣いにこっそり呟いた子供に、他の子供たちが弾かれたようにそちらを見る。それからそろってレイエンの腕の中のネコに羨ましげな視線を向けることからすると、皆ネコを抱きたいのではなくてレイエンに抱きつきたいようだった。小学生という無邪気に自分の欲望に忠実な年齢で、好きな人に抱きつかないということは、愛情を注がれた子供ならまず有り得ない。

「いっちばーん乗ーりー!」

嬉しそうに叫んでレイエンに飛びついた女の子を皮切りに、次々にレイエンに飛びついていく。
青銀色の幻想的な輝きを持つ髪を引っ張って登ろうとする男の子もいたが、年長の女子に叱り飛ばされてしゅんとして手を離す。そもそも、彼の全身は人間という形状をとっているだけで本質は全くの別物なので、髪もまた然り、引っ張られても抜けることはないし痛くもないのだが、髪の毛を引っ張って登ろうとするのは流石にレイエン以外にはまずいだろう。大抵の御仁は髪の毛を気にかけているし、大抵の淑女には髪を引っ張るなどとんでもない非礼に値するであろうから。

「気にすることはないよ。わたしには痛くも痒くもないからね。でも、他の子や大人にはやってはいけないよ。君も、髪を引っ張られたらすごく痛いだろう?他の子も、髪を引っ張られたら痛いだろう?ね、相手の気持ちをよく思いやれる子は偉いね」

ぎゅうぎゅうと子供たちに抱きしめられながら、そう優しく諭す。その声はどこまでも優しくて、穏やかで、だから子供たちは名前も知らない彼が大好きなのだ。


「じゃあ、また明日会おうねー!」
「明日、ここにいてね」
「ぜったいだよ!」

すっかり懐いてしまって、家に帰りたくないと言う子供たちは、帰りを待っている人がいるだろうとレイエンに諭され家路に着く。
大人しく家に帰るかわりとばかりに約束させられた「明日」に、彼は微苦笑を浮かべて頷いた。
そもそも彼は、休息を必要としないのだから、昼も夜も関係なく銀幕市を彷徨っている。
休息を必要とする者は眠りによって世界を区切って一日一日を数えているが、レイエンにとっては昼も夜も流れるもので、眠りによって世界が途切れることなどない。そのため彼は「明日」とか「何日後」とかいう感覚がどうにもよくわからなかった。

「明日、か。具体的に何時なのか、あの子に聞いてみようか」

自分と一緒に銀幕市に実体化した元人間の魔王を思い浮かべながら、夕焼けを目に焼き付けるように眺めて、彼は再び歩き出す。
夜がやってくる。
昼とは一味違った夜という世界も、彼は平等に愛している。
あの子―――シェリダンの活動時間も、夜だ。
夕日で紅く染まった髪をふわりとなびかせ、ゆったりと、今度は目的地決めて歩き出す。

「夜・・・深い傷を負った子たちが、好む時間だね」

優しく微笑んで、歩き出す。






すごく中途半端な気がしなくもないような気がします・・・・・!
世界の創造者の日常―とある日の夜―を読みたい方は「続きを読む」をどうぞ。


世界の創造者の日常―とある日の夜―


腕のなかにいたネコが僅かに名残惜しげに、しかしプライドを持って離れていった後、レイエンは紺色の夜空の下を昼間と変わらぬゆっくりとした歩調で歩いていた。
昼間より人通りの少なくなった道を、ゆっくり、堪能するように進む。
銀幕市では、夜は昼間に活動できないムービースター達が活動する時間でもあるから、人っ子一人いない場所というのは夜でもあまり見かけない。ぽつん、ぽつんと、少なくはあるが人が皆無ということはあまりないのだ。
空を見上げて、レイエンは静かに微笑む。
―――今夜は、雲ひとつない満天の星空だ。
街灯に照らされて煌く髪が、さらりと風を孕む。
通りすがりの、帰宅途中であろう男性が、息を呑んでレイエンを凝視している。レイエンはくすりと笑んで、その側を通り過ぎた。
夜は、昼間と違って、目立たないように見える術をかけていないのだ。
シェリダンに「その目立つ外見で昼間、外を歩いてみろ。あっという間に信者の列が出来上がるぞ」と言われていたので、昼間は自分に「そこにいるけれど意識に残りにくい」という暗示を与える術をかけているのだ。ただし、好奇心旺盛な子供たちや、気配に聡い者にはあまり効かないが。

「さて―――――」

レイエンが辿り着いたのはこぢんまりとしたバーだった。店名「BLACK  JOKE」。シェリダンはことあるごとにこの店名に物申している。どうやらシェリダンの美意識からすると何か物申さずにはいられないらしい。
レイエンからすると別に、文句をつける気も起きないのだが、そのことを言うと「お前も美的オンチなのか!棲んでたところはあんなに綺麗で文句のつけようもないほどだったのに!」とシェリダンに詰られた。以前棲んでいたところというのは映画の中のレイエンのいた世界のことを言っているのだろう。

「シェリダン」

呼びながらバーの中へ入る。
バーの内装は、小さい割に洒落ていて、シックな雰囲気に統一されていた。カウンターにストゥールが3つ、小さなテーブルが2つ。本当に規格外に小さな店だが、狭い場所特有の雑多な感じはしない。
少し掠れ気味の音でゆっくりとしたテンポのジャズが、控えめな音量で店内を流れている。

「仕事場に来るなって言わなかったか?」

低いくせによく通る声が、カウンターの向こうから発せられた。
レイエンが、そちらを見て笑みを深める。
カウンターの向こうでは、端整な顔に呆れと諦めを浮かべた、異形の青年が立っていた。

臙脂色の捩れた角を両のこめかみに一本ずつ持つ青年は、使い終わったグラスを並べる手を止めて溜め息をついた。

「仕事場には来るなってついこの間言わなかったか?それとも聞いてなかったのか?」
「聞いていたよ。けれどね、ちょっと明日までに知りたいことがあったものだから。」

レイエンがそう答えると、青年―――シェリダンは驚いたようだった。赤い、とろりとした血色の目が見開かれる。
シェリダンの驚きももっともだった。なにせ、レイエンは昼も夜もお構い無しに銀幕市を彷徨っているため、「時間」というものに縛られないで行動しているに等しかったのだ。
それが、「明日まで」とは。

「・・・誰かと何か約束でもしたのか」

一瞬緊急事態かとも思ったが、それならこんなにのんびりしている筈はない。それなら、誰かと接触を持って、時間を知る必要でもできたのか、という結論に至った末の質問だった。

「うん、ヒトの子供たち、生まれて十年前後かな。それくらいの子たちに「明日会おうね」と言われてね。・・・そうだ、シェリダンも一緒に行くかい?一応、今日子供たちと会ってから24時間後の同じ場所にいればいいのかな、と思うのだけど、いまいちよくわからないからね」
「・・・・・・・・・・。・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

子供好きのシェリダンは全ての動きを停止して葛藤した。無論、仕事に遅れては元も子もないため行けないのだが、子供。子供に。会いに。自分が。子供に。
シェリダンはものすごく葛藤した。
が、どうにか言葉を絞り出す。

「い・・・いや・・・仕事があるから・・・」

このとき、仕事なんて知るか!―――と言えたらどんなにかいいだろう、とシェリダンは血を吐く思いだったという。
レイエンは、人間だった頃のシェリダンが近所の子供たちとよく遊んでいたのを思い出したので言ってみたのだが、仕事があるから、と断る彼はすごく残念そうに見えた。

「来るといいよ、シェリダン、私の愛しい子。君は子供が大好きだろう?」

微笑んだレイエンに、シェリダンは頭の中で戦っていた「仕事」と「子供」の、「子供」に軍配が上がるのを感じていた。
レイエンはカウンターを軽やかに跳び越えると、何事かと瞬くシェリダンを優しく抱きしめた。

「私の、愛しい子・・・」

溢れる愛情で蕩けた声で呟くレイエンを、シェリダンは内心かなり焦って引き剥がそうとする。軽く巻いた黒髪を撫でられて、力が抜けそうになるのを、なんとか気力で持たせているのがわかった。
レイエンにとっては、今日飛びついてきた子供たちも、シェリダンも、同じ慈しむべき存在なのだ。ただ、言語を持つ生き物は歳をとると抱きしめさせてくれなくなるけれど。

「っ、おい!こんなところを店長に見られたら、どんな誤解をされるか、たまったもんじゃな・・・!?」
「だって頭も撫でさせてくれないだろう?この銀幕市に、私の被造物―――私の子供は君しかいないのに」
「いい年した男が頭撫でさせたりなんかするかっ!」

力一杯突っ込んだシェリダンの努力も空しく、レイエンはなかなかシェリダンを解放しなかった。その内抵抗することを諦めたシェリダンが身体の力を抜くと、自分の腕のなかにしっかりと抱きすくめて、静かに頭を撫でていた。もしシェリダンが子供だったら、完全に身を預け安らかな寝息を立ててしまいそうなほど優しい腕の中、涙が出そうなほどの安堵に包まれてしがみついていただろう。
そうしてレイエンは、抵抗の気力が萎えたシェリダンを離した後も、朝までバーに居座り続けたのだった。




うーん。当初に目指していた物と微妙に違う気が・・・?(汗)

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