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螺旋特急ロストレイルに登録しているキャラクター背後のブログです
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あかいゆめなのに何故ブログは青っぽいのかと聞かれて詰まってしまったどうしようもない生き物。色は青の方が好きなのです。
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ぴぴぴぴぴ。

聞き慣れない音がして、クハイレは頭をめぐらせた。
昼寝中だというのに、邪魔したのはどこのどなた様であろうか。むくりと身体を起こすと、銀色の毛並みからはらはらと青い草が数本落ちた。
くああ、と口を大きく開けて欠伸をする。
淡い桃色の鼻がぴすぴすと鳴った。
周囲からは森の匂いしかしない。気のせいだったのだろうか?そう思い舌で鼻を舐めたところで、もう一度音が鳴った。

ぴぴぴぴぴ。

ぴくん、と耳を立てて、クハイレは今度こそ音の出所を突き止めた。それは、彼女の脱ぎ捨てた服の中から聞こえて来ていた。
下草を4本の足で交互に踏みながら服に近付く。ふんふん、とにおいを嗅いで、そこから自分以外のにおいがすることに気付く。
『・・・そういえば、ケイタイとか言うものを受け取ったような気もするの』
同族にしかわからぬ言葉で呟き、めきり、と身体を鳴らした。
めきめきめき、と関節の鳴るような音が森のなかに響く。
銀色の大きな狼がみるみる小さくなってゆく。
あとに残ったのは、小柄な体躯の女性が一人。ぱさり、と顔にかかった黒髪をかきやり、白い裸身を隠しもせずに立ち上がると、服を探って携帯を取り出した。
迷うように手が止まり、次いでなめらかに携帯を開き通話ボタンを押す。
「社長でございますか?」
つい先日、ヴォルムス・セキュリティという会社に就職したクハイレは、いわば新米社員だ。携帯を持たないクハイレは携帯を貰って、そしてそれを使うのも今が初めてだ。
そして、もちろん仕事も今回が初めてである。
「・・・はい。承知いたしました。では20分後に」
ぱたん、と携帯を閉じ、クハイレは服を拾いあげ、こてんと首を傾げて悩んだ。
「狼のまま行っても構わないのでございましたか・・・どうしたものでございましょうか」
暖かい陽の当たる草むらは、クハイレの裸身を隠す役目を果たすには少々役者不足だ。しかしクハイレはそのことに全く頓着せず、裸のままバックに服を詰め込み始めた。
そして再び大きな銀狼の姿を現すと、バッグのひもを口にくわえ、意気揚々と出発した。
鋭い牙がバックのひもを貫通するのを感じ、クハイレは初給料が入ったらひもを革で補強しよう、と人間臭いことを思う。

今後も狼の姿で街中やマンションを闊歩する気満々の、クハイレだった。
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クハイレさんは りそうがたかいです。
まず しゅうしょくさきの きぼうなどは 
『一日一食、最低でも拳大の生肉を出してくれる』
『最低でも30坪の庭のようなものがある』
『無愛想でも構わんという心の広いお方がいる』
『狼の姿でうろついても構わんという心の広い以下略』
えとせとら です。
こんなきぼうを かなえてくれるしょくばが そんなかんたんに みつかるのでしょうか?

クハイレさんは りそうがたかいです。
まず かのじょと つきあうには
『最低でも30歳以上の雄』
おしりのあおいちぇりぃちゃんは おことわりだそうです。
『クハイレと同格かそれ以上に強い』
『子種を持っている』
『強靭な精神を持つ』
『クハイレのタイプである』
さいごのひとつ が いちばんむずかしいような きがします。
こんなに じょうけんがおおいのに はたして つきあってくれるひとは いるのでしょうか? 

クハイレさんは りそうがたかいです。
つよくつよく いきたいとねがっているのに
いつしんでもいい ともおもっています。
せかいが のぞみどおりになることを のぞんではいないのに
せかいが のぞみどおりになることを いつもねがっています。

クハイレさんは りそうがたかいです。
けもののせかいを なによりなつかしくおもっているのに
にんげんのせかいを こわしたくないとねがっています。

クハイレさんは りそうがたかいです。
みれんなどないと おもっているのに
けもののせかいこそが じぶんのかえるばしょだと おもっているのに
けもののせかいこそを ここちよいとかんじるのに
にんげんのせかいが とてもなつかしい。
暇だった。
それを作った理由はその一言に尽きる。
就職先が見つからず、もういっそ本性を現してどこかの庭先にでも飼われてやろうかとヤケッパチになっていたときだった。
銀幕ジャーナルを拾ったのは。
ベビーピンクの君をその紙面に見つけたのは。
クハイレがこの時暇であったのは、かの御仁、八之銀二にとってとてつもなく不運であったとしか言いようがなかった。

自宅。
「確か、女装癖というのでありましたか。」
銀幕ジャーナルを前に、クハイレは考えこんでいた。
「八之様がこのような特殊な性癖をお持ちでいらしたとは初耳でございます。」
間違った認識が着々と育まれていく。
「遺伝子的にかなり理想の方でございましたが・・・私も鼻が鈍ったのでございましょうか」
クハイレは、根本的に、なぜ人間の雄というものが雌のふりをするのを嫌がるのか理解できない。彼女ら狼にとっては、雌のふりなど獲物をおびき寄せるなどで結構役に立ったものだからだ。
弱々しく見えるから嫌なのだろうか?
クハイレは首を傾げる。
「別段、女装癖があったからといってただの個性以外の何ものでもないと思われるのですが・・・なぜヒトはこうも騒ぐのでしょうか」
わからない。
わからない、が・・・。
「楽しそうでございますね」
写真を取られたことに対する恐怖とか焦りとか崩れるプライドとかがありありと顔に表れている銀幕ジャーナルの写真を見て、なぜそう思えるのか。
「ちょうど暇でございますし、ヲトメサイズのメイド服でも作ってみましょうか」
間の悪いことに、彼女は、暇だったのだ。

出来上がった「ヲトメ専用メイド服」を見て、彼女は満足げに頷いた。
「なかなかの出来でございます」
黒い生地に白いレースのふんだんに使われたそれは、「メイド服」というよりはどこか「ゴスロリ系」の衣装だったが、まっ平らな胸を隠すようにふんわりとしたレースを使ったエプロンが、メイドらしさを引き出している。ヘッドドレスまで仕上げたのは、やはり暇だったからなのだろうか。
「早速売りに出かけましょう」

出来上がって十分でフリ―マーケットに並ぶこととなったメイド服は、
『漢女(ヲトメ)専用メイド服 今なら××××円でヘッドドレスつき!』
と看板を出した瞬間、速攻で売れた。

その反応の激烈さに、クハイレは今後も作るかどうか、真剣に検討中である。

本日も快晴。
出かけるにはなかなかの良い日和だ。
クハイレは荷物を持ち、ドアを閉めて外へ出た。
今日は、就職先を探すためでなく、届け物をしに外出する。そもそも、家に篭っているのはあまり好きではないクハイレなので、外へ出る理由があるのは嬉しい。勿論、理由がなくとも外出することはよくあるが。
「あら、こんにちは。お出掛けでございますか?」
ちょうど隣人も出かけるところだったらしく、黒い巻き毛を靡かせた青年が扉を開けた。とろりとした血のような色の瞳がこちらを向く。浅黒い肌の端整な顔立ちが魅力的に微笑んだ。
「ああ。貴女も何処かへ行くのか」
「ええ。知り合いにお届け物をしに参ります」
会釈して、それから傍らのイヌ科の獣にも喉の奥を鳴らして挨拶する。それに、驚いたように青年が目を見開いた。
「話ができるのか?」
「私、本性は狼でございまして」
こう言うと怯える者もいるのだが、青年は素直に受け取ったようだった。自身も魔に属する者だからだろうか。ごく普通に質問してくる。
「じゃあ、名前も知っているのか?」
「この方のお名前でございますか?」
「ああ。言葉が話せないからなんと呼べばいいかわからなくてな・・・」
獣を見やると、茶目っ気たっぷりにウインクを返された。これは、『秘密にしといてくれ』という意味だろう。
「秘密とのことでございます。ご自身のお好きなように呼ばれるのがよろしいのでは?」
「・・・・・・・秘密?」
何故秘密、と顔に書いたままの青年に暇を告げ、クハイレは歩き出した。目指すは知り合いの家。

クハイレ・ウヴェウィンベレの朝は早い。
一番鳥が鳴いた瞬間に跳ね起きて朝食(一番鳥)を食べるくらいなので、それはもう早い。
彼女は寝る時は大抵銀狼の姿に戻って寝るので、起きて人型に戻った時は当然のように素っ裸だ。素っ裸が嫌なら赤ずきんを待つ狼のごとく服を着ろというのだ。とんでもない。狼の姿で服を着るなんて、宇宙服を着込んで寝ろと言われているようなものだ。勘弁してもらいたい。
そんなとりとめのないことを考えながら、彼女は大きく伸びをした。
今日はどの服を着ようか。
本性が狼なのに裁縫が上手い彼女は、お手製のメイド服をたくさん持っている。

今日は装飾の少ない、クハイレ的にはお気に入りのメイド服を着た。
それでは朝の挨拶に出掛けましょうぞ。

ガチャリとドアを開けると、空が白んで、太陽が顔を覗かせようとしているところだった。

くるる。

喉を鳴らして目を細める。今日は晴れそうだ。
朝の静寂を破らないように、そっとブーツのつまさきを地面につける。静かにドアを閉めると、視界の隅で動くものがあった。殺気は無い。自然にそちらを見やると、灰色の、犬とも狼とも区別のつかない、大きな獣がいた。

るるるるる。

喉を鳴らして挨拶をする。意味は、『お早う、今日も元気ですか』を簡略化したような。イヌ科の生物に大体共通して使われる挨拶。

オンッ

色好い返事。意訳『おうともよ!』。お隣のムービースター、名前はなんだか忘れたが臙脂色の捩れた角が特徴的な青年を気に入って彼の家の前に居座っているらしい。関係はなかなか良好なようで、よく一緒に出掛けたりしているそうだ。
灰色の獣に視線で暇を告げ、熱烈な朝の光を浴びせてくる太陽を見上げた。
「そんなに照らさずとも目はすっかり覚めております。」
これから、散歩がてらにほうぼうに挨拶してまわるのだ。もはや毎朝の恒例行事。自由気ままに寝ている猫たちはもとより、各家の犬たちは個性も様々だ。たまに、お隣の獣のようなムービースターの獣もいるけれど。

「今日こそは、職を見つけねばなりません」

朝の街に、歩き出す。

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