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螺旋特急ロストレイルに登録しているキャラクター背後のブログです
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あかいゆめなのに何故ブログは青っぽいのかと聞かれて詰まってしまったどうしようもない生き物。色は青の方が好きなのです。
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「まちゃあがれ!」
「ちくしょうあの野郎殺してやる!」
チンピラたちがぜえぜえと呼吸を乱して悪態をつく間に、青年はあっという間に廃墟の中に消えていた。
その廃墟は、今でこそ荒れ果てていたが、昔は栄華を誇ったであろう、見事な細工があちこちに見られる荘厳な建物だった。
中庭は今でも誰かが世話をしているのか、ベルベットのような芝生と家庭菜園がある。
廃墟の庭の世話などする者がいるのだろうか?
そんな当然の疑問に気付くチンピラはいなかった。


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「やれやれ・・・」
青年は、大きく溜め息をついた。
「にーちゃーん!スられた!今日の稼ぎとられた!」
「殴られた!きんたま蹴り返した!」
「うずくまったから石で殴って逃げた!」
「バーカアーホ悔しかったらにーちゃんに勝ってみろーって言ってきた!」
原因はお前か
四人の少年と一人の青年は、道の真ん中で十人ほどの柄の悪い男たちに囲まれていた。四人の少年達はそれぞれ青年にすがり付いて「この人に命じられたのでやったんですぅ」的な空気を演出している。
青年はそれに気付きつつも、あえて否定はしなかった。
身内も利用するくらいにはずる賢くなければ、彼らくらいの小さな子供が組織にも属さず生きていける筈がないのだ。この貧民街は、それほど甘くはない。
まぁ、ただ単純に「たぶんにーちゃんなら大丈夫さ!たぶん!」といって問題を丸投げしているだけとも言えるが。
青年も過去、少年時代はこうやってピンチを切り抜けたものだ。
彼が問題を押し付けた相手は実の父親だったが。
シェリダンは、毎日、人間だったころの日々を思い出す。
貧しさは人の心を蝕むか?
―――否。


「にーちゃーん!」
近所の子供たちの元気な声が近付いてきた。
赤毛のビル、アッシュブロンドのセス、黒髪のマナ、茶髪のマーク。
その格好はひどいもので、襤褸切れを纏っているとしか言いようがない。それでも泥に汚れた顔ははちきれんばかりの生命力に輝いているし、その明るい瞳にはこの境遇を嘆いているような陰はこれっぽっちもない。
「ビリー、セス、マナ、マック」
一人一人名前を呼ぶと、嬉しそうに駆け寄ってくる。
その光景は、一種異様であった。
きちんとした宮廷服をその身にまとい、一片の曇りもなく銀に近い金髪をリボンで括った白皙の青年が、ボロ切れを着た子供の乞食を相手に眩しいばかりの微笑みを浮かべて待っているのだ。
その容姿、立ち居振る舞いなどから貴族と知れる青年が、だ。
「おかえりー!」
ぎゅうぎゅうと抱きついた子供たちの頭をポン、と叩いて、彼は優しげな微笑みを浮かべたまま黒髪の子供を吊り上げた。
「なんだよ、離せよー!」
「財布を返したらな」
青年がそういうと、子供たちは顔を見合わせた。
「・・・バレた?」
「今度も失敗ー」
「にーちゃん、隙がなさすぎー」
どうやら抱きついた隙に財布をすりとっていたらしい。
「おまえたちね、年季が違うんだからそう簡単に騙されるわけないだろう」
と、いうか。
会う度に走り寄ってきて財布を掠め取ろうとするのだから、騙される以前の問題だ。とはいえ、四人の子供たちのうち誰がすりとったのかはそう簡単にわかるはずがないのだが。
「仕方ないねー」
「しょうじんします」
「次こそは!」
「にーちゃん、今日のごはん何」
好き勝手に騒ぐ子供たちに、青年は明るい緑の瞳を瞬かせた。
「今日も収穫がなかったのか?」
「今日もってなんだー!」
「ひびがんばっているのです」
「昨日は一回成功したよ!」
「今日はおかねがないからごはんちょーだい」
子供たちはスリをして生活している。
収穫があった日にはご飯にありつけるが、なかった日にはすきっ腹を抱えて寝るしかない、そんな生活を送っている。彼らでは、幼すぎて雇ってくれるところがないのだ。
そんな4人は、稼ぎのない日はこの貴族の青年にたかっている。
「四人いるんだから連携してやればかなり出来るだろうに・・・バラバラでやろうとするからダメなんだ」
「いつかにーちゃんに追いついて見せる!」
「でんせつのすりしをこえるのだあ!」
「できるもんならやっとるわい!」
「ねーにーちゃーん、ごーはーんー」
「マナ、とりあえず財布」
「ちぇー」
しぶしぶと手にした布袋を返すと、青年はそれを受け取って懐に収めた。
「残念ながら今日は貴族のお勤めをしてきたから、働く時間は無かったしな。財布の中には一銭もない」
「「「「えー!!!!」」」」
「仕方ない、今日は草でも食べてしのげ」
「やだー!」
「こないだ食べたらおなかこわしたよ!」
「青臭いからやだー!」
「にくがたべたーい!」
「夜会なんて貴族めー!」
「にーちゃんのばかー!」
「どーせにーちゃんはたらふく食ってきたんだろー!」
「いーなー!」
「失礼な、夜会ではそんながっついて食べないもんだぞ」
青年が懐から出した包みに、子供たちは一斉に口を噤んだ。

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