螺旋特急ロストレイルに登録しているキャラクター背後のブログです
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あかいゆめなのに何故ブログは青っぽいのかと聞かれて詰まってしまったどうしようもない生き物。色は青の方が好きなのです。
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「やれやれ・・・」
青年は、大きく溜め息をついた。
「にーちゃーん!スられた!今日の稼ぎとられた!」
「殴られた!きんたま蹴り返した!」
「うずくまったから石で殴って逃げた!」
「バーカアーホ悔しかったらにーちゃんに勝ってみろーって言ってきた!」
「原因はお前か」
四人の少年と一人の青年は、道の真ん中で十人ほどの柄の悪い男たちに囲まれていた。四人の少年達はそれぞれ青年にすがり付いて「この人に命じられたのでやったんですぅ」的な空気を演出している。
青年はそれに気付きつつも、あえて否定はしなかった。
身内も利用するくらいにはずる賢くなければ、彼らくらいの小さな子供が組織にも属さず生きていける筈がないのだ。この貧民街は、それほど甘くはない。
まぁ、ただ単純に「たぶんにーちゃんなら大丈夫さ!たぶん!」といって問題を丸投げしているだけとも言えるが。
青年も過去、少年時代はこうやってピンチを切り抜けたものだ。
彼が問題を押し付けた相手は実の父親だったが。
青年は、大きく溜め息をついた。
「にーちゃーん!スられた!今日の稼ぎとられた!」
「殴られた!きんたま蹴り返した!」
「うずくまったから石で殴って逃げた!」
「バーカアーホ悔しかったらにーちゃんに勝ってみろーって言ってきた!」
「原因はお前か」
四人の少年と一人の青年は、道の真ん中で十人ほどの柄の悪い男たちに囲まれていた。四人の少年達はそれぞれ青年にすがり付いて「この人に命じられたのでやったんですぅ」的な空気を演出している。
青年はそれに気付きつつも、あえて否定はしなかった。
身内も利用するくらいにはずる賢くなければ、彼らくらいの小さな子供が組織にも属さず生きていける筈がないのだ。この貧民街は、それほど甘くはない。
まぁ、ただ単純に「たぶんにーちゃんなら大丈夫さ!たぶん!」といって問題を丸投げしているだけとも言えるが。
青年も過去、少年時代はこうやってピンチを切り抜けたものだ。
彼が問題を押し付けた相手は実の父親だったが。
「おい、にーちゃんてのはてめぇだな?そこのガキどもがナメた真似しくさったんだけどよ」
「どう詫びつける気だぁ?」
睨みをきかせてくるごろつきを一瞥して、青年は四人の少年に離れるよう手振りで示した。
「わかった。じゃあ慰謝料でも払えばいいか?」
「慰謝料だぁ?ハッ、いいじゃねぇか、払ってもらうぜ」
「見たトコ「にーちゃん」は金持ってるようにゃ見えねえけどなぁ?カラダで払ってくれんのか?見かけは上等だけどよ?」
洗濯を繰り返し、色の褪せた服を着ている青年を指差して男たちはあざ笑う。ところどころ欠けた黄色い歯が見え、少年達の顔に嫌悪の表情が色濃く現れる。
光を反射するプラチナブロンド、透き通った若草色の瞳、気品の漂う端整な顔立ち、確かに彼らの「にーちゃん」はきれいだ。かっこよくて、彼らはいつも「にーちゃん」に憧れている。
だから、彼らの「にーちゃん」を貶める者がいたら、4人でよってたかって身包み剥いできたものだが。
今のこの状況では、下手をすると「にーちゃん」の邪魔になる。
小さくてか弱いが故に常に4人でいる少年達は、自分の無力さと世界は優しくないことを知っていた。
「じゃあとりあえず、道の真ん中では通行の邪魔だからそっちの路地に」
「通行の邪魔だとよ」
「てめぇらのにーちゃんは育ちがいいなぁ?落ちぶれた貴族様だったりしてな」
青年を小突いて、男たちは下卑た笑いを浮かべる。
「元貴族だぁ?そりゃ高く売れるぜ」
「慰謝料も期待できるぜ?」
押し黙った少年達の頭に手を置いて、穏やかな顔をした青年は小さく囁いた。
「路地に入ったら走れ。追ってきたら潰せ。」
殺意満点の語尾に、少年達の肝が冷える。顔に出さないだけで充分怒っているらしい。
「にーちゃんが怖いよぅ」
「殺る気だぞにーちゃん!どうしよう」
「身ぐるみ剥いだあとにーちゃんにイケニエとして捧げよう」
「でもにーちゃんでも十人はあぶないよ」
こそこそ話していると、いつのまにか路地に入っていたらしい。青年の手がとん、と少年達の背中を押した。
「ざ・はんぐまーん!」
「たっしゃでねにーちゃん!」
「いくぞわれらはらぺこ四人組!」
「さらばじゃー!」
だだだっと走り出す少年達の足の速いこと。
つむじ風のように走り去った少年たちをぽかんと眺めていた男たちは、いつのまにか青年の姿も消えていることに気付き、どよめいた。
「どこ行きやがった!?」
「こっちだ」
見上げると、小さな窓から青年が上半身を乗り出して何かを落としてきた。悪態をついて振り払ったそれをよくよく見ると、それは自分たちの財布ではないか。男たちは慌てて懐を探った。
果たして、懐に財布はなかった。
そして、拾いあげた財布には、金などびた一文入っていなかった。
「てっめぇぇ!!」
「いつの間にスリやがった!」
「スリだけで生計を立てていた時期もあるんだ、これくらいはお手の物だ。ごちそうさま、お前たちのおかげで今日はいい稼ぎができた」
爽やかに笑むその顔も、この状況では挑発に他ならない。
「ざけんな!」
「やっちまえ!」
至極単純に頭に血を昇らせ、壁をよじ登ってくる。青年は素早く身を翻すと、ちょうつがいが壊れ倒れたドアを身軽に跳び越え外へ走り出る。
出くわした男たちの中の一人に肩からぶつかって体勢を崩し、倒れる勢いのまま鳩尾に膝蹴りを食らわせた。駆けつけてくるチンピラたちを確認し、走り出す。
その速さときたら少年達に負けないほどで、男たちは青年を見失うことすらなかったものの、かなりの距離を引き離された。
青年は、大きな廃墟に入っていった。
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