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螺旋特急ロストレイルに登録しているキャラクター背後のブログです
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怪電波発信ちゅう(~・・)~ ≫≫≫≫≫【愛の電波】

「うーん…」
「何を唸ってるんですか店長」
何やらアンティークの域に達しようかという革製のショルダーバッグを前に唸り声を上げている店主を見て、シェリダンはそう声をかけた。
これで怪しげな薬を前に悩んでいるのだったら勿論声なんかかけないのだが、店主にしては珍しく【魔法薬】以外のことで悩んでいるようだった。

店主は年齢不詳のエキストラ、名も無き一般人(自称)の魔術師志望の謎の男(シェリダン談)である。
髪は長く真っ白で、大抵は緩く三つ編みにして背やら肩やらに流している。いつも暗色系のローブを着ているが、今日はモスグリーンの厚手のものを着ていた。
真剣に悩む横顔は絶世のとまではいかぬとも端整に整っているのだが、大きな丸眼鏡で表情を隠しているためか食えない笑みを浮かべている事が多いためか、全くと言っていいほど気付かれない。
いや・・・店主と個人的に親しい者は気付いているだろうが、一見普通の人間に見えるのだから眼鏡とは恐ろしい。
モノクルをかけていることも多いが、それは研究の時にのみつけるらしい。

とにかくも、魔法薬とやらのことで悩んでいる店主に声をかけるのは得策ではない。魔法薬のことに関しては外道な店主のことだ、普通に実験台にされかねない。
「また薬のことか」と思っても口に出さないのは、ただ単にそこまで皮肉な性格ではないというだけでなく、どんなとばっちりが来るか分からないという日頃の学習の賜物だったりする。
「かの長老殿の屋敷にお邪魔するんだけどさ、何を持っていったらいいかなぁと思ってね」
「手土産の類いか?それなら…」
「いやいや土産じゃなくてさ。武器。あの人の家だし万が一はないと思うけど、億が一と心構えの問題で」
「…………」
他人様の家に行くのに武器を選りすぐるのは何かおかしいんじゃないかとか(しかしシェリダンは武勲に優れた貴族の家に生まれたので強く否定はできなかった)その万が一が起こる状況に慣れすぎている感があるのは何故だとかそもそもほとんど店から出ない癖にいつのまに知り合いなんて作ったとか色々思うところはあったが、シェリダンはとりあえず一つだけ口にした。
「…手土産を持っていくのは礼儀だぞ」
「うーん、とはいっても魔導書くらいしかないねぇ。あの人に土産って言ってもね…血が足りないってことはないだろうし」
「血?…吸血鬼なのか」
「よく分かったねシェリダン君。君は時に侮れないほど鋭いけど、欲を言えば長老殿って言った時に気付いて欲しかったなぁ」
「喧しい。…しかし店長、店長の血は不健康そうでとても不味そうですが」
「あ、やだなぁ、これでも毎日トレーニングと必要な栄養はとってるよ?トレーニングもしないで弾が当たるほど理不尽な存在じゃないんだからさ。…たま~に食事忘れるけど☆」
「気色悪いので止めて下さい店長」
ボケる店主に棒読みで返すシェリダン。その目はどこか遠い所を見ている…
「とにかく。食事を抜くなとは言わんがきちんと食わないと急に動けなくなるぞ。その時に側に誰もいなかったらそのまま飢え死にだ。せめて3日に一度は食べた方がいい」
真面目な顔で告げてくるシェリダンに店主は眼前のものに向けていた視線を外し顔を上げた。
「いやぁ…流石に3日に一度じゃ死ぬよ僕。シェリダン君、そんな難民みたいな生活してたのかい?」
「極貧でな。飢饉の年は毎回飢え死にしかけた経験がある。この、銀幕市のように労働したら必ずしも報酬がもらえるという環境でもなかった」
「労働者には辛い時代に生きてたんだねぇ。今はきちんと食べられるからいい時代だよねぇ」
しみじみと言う店主にシェリダンは冷たい視線を投げる。
「そういえばこの間の給料ですが、ちょっと契約時より少ない気がしたんですが」
「ああっとそういえば以前情報提供のお礼に噛み付かせてあげたら美味いって言ってたから少なくとも不味くはないらしいよ僕の血」
わざとらしく話題を逸らす店主に、しかしシェリダンは逸らされた先の話題にもつい乗りかかって店主の意図通りになってしまう。
「……どっちの件も、後で色々と詳しく聞かせてもらおうか」
「金とか物品ばっかりを見返りに望む人たちばっかりじゃないんだよ、特に魔術に関わる人たちはね?」
なんでもなさそうに肩を竦める店主に、シェリダンは呆れたように溜め息を吐く。

住民がどんどん流出しているという銀幕市だが、この男は街が壊滅する時でも気にせず店の中で怪しげな古書を読み耽っているに違いない。または、街が壊滅するもっと以前に既に街の外に出て何も気にせず研究に没頭しているか。
…もし前者だった場合我が引っ張っていく他ないのか。
シェリダンの基本的にお人好しな思考回路は、そこで見捨てられないから色んな物に振り回されるのだと気付いているのだろうか…いや、気付いていないだろうが。

「やっぱりグロック34かな」
「一体何挺持ってるんですか」
「5挺しか持ってないよ?」
「それの何処が一般人だ…」
ぼやくと何が面白いのか店主は愉快そうに笑った。いつものローブを着て、その魔術師めいた格好に不似合いな黒い拳銃を袖にしまいこみ、何が入っているんだかよく分からないというか分かりたくもない革のショルダーバッグを背負い、店主は準備万端!という顔をした。
「手土産はどうした手土産は」
「えっ?」
「え?じゃない。ワインでも持っていったらどうだ?ブルゴーニュの10年物の白があっただろう」
「君は何てことを言うんだい!吸血鬼=赤ワインorトマトジュースだよ!確かシャトー・ロートシルトがあったよね」
「ああ。自分で買った酒くらい把握しておけ、節約の基本だ。24年物のシャトー・ムートン・ロートシルトと43年物のシャトー・ラフィット・ロートシルトだ。…43年物を持って行け」
「そんな目が飛び出そうなもの持ってったら来月買う予定のミイラが買えなくなるじゃないか」
「ミイラなんて桁が違うだろうが!そんな馬鹿高価いもの買う金があるなら我の給料をきちんと払え!そもそもその「目が飛び出そう」な値段の酒を買ってきたのは店長だろうが!」
ぴしゃーんと雷を落としたシェリダンの説教を耳を塞いでやり過ごし、店主はがさごそと棚を漁った。
「大体以前にも我の給料の10倍近くある酒を買ってきて何を考えているんだか…そんな高価な酒を頼む客などいないだろうが。どうせ趣味で飲むなら独り占めしないで誰かと気分良く飲んで来い」
土産は惜しむなというのが家訓だ、とやはり真面目に諭してくるシェリダンを見て店主は思わず笑ってしまったが、シェリダンが怪訝な顔をしたので慌てて顔を取り繕う。
「誰の家に行くのかは面倒なことになるのも困るし聞かないが、明後日は給料日だ。それまでに帰って来い」
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