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平凡な吸血鬼・ヴィクターの起床例①(書き途中)。

ファイルを漁っていたら見つけました。
完結してなくて申し訳ないのですが、銀幕が終わる前にアップせねばと思いまして。

ヴィクターの目覚めは日没から始まる。
陽光の最後の一筋が地の果てに消えた後、ヴィクターはぱちりと目を開ける。
世間には寝起きの悪い吸血鬼なるものもいるようだが、ヴィクターは寝起きは良い方である。たいていの場合決まって日没に目が覚めるからだ。
並の吸血鬼らしく棺桶で寝ていたヴィクターは、まず手に握っているはずの眼鏡をかけようとして――何もないのに気付いた。
「……え」
じわっと冷や汗をかきながら、胸ポケットにも手を入れる。いつもなら、手に握るか、胸ポケットに入れて寝ているのであるが、今日に限ってその眼鏡のレンズのひやりとした感触がどこにも感じられない。
「……えええっアだっ!?」
思わず勢い良く起き上がって棺の蓋に額をぶつけ、闇の中(というか棺桶の中)で額を両手で抑えて悶絶する。
死んでるはずなのに何故痛いのか。それはもう神の采配というか、ヴィクターは生前に同じような痛みを感じたことがあればしっかり痛みは感じるのである。
つまり、生前にも思いっきり額をぶつけて悶絶したことがある訳で、そう考えると吸血鬼というフレーズに付属してくる甘美で優雅なイメージがガラガラと音を立てて崩れていく感があるが、安心していただきたい、優雅で麗しい吸血鬼はきちんといる。
ただヴィクターは典雅ではあるかもしれないが甘美とかいう麗しい呼称とは全く無関係の一般吸血鬼である。
何故ヴィクターは眼鏡が見つからないくらいでこれほど慌てるのか、普通吸血鬼とは夜目が利き、暗闇の中でも物がしっかり見えるはずである。眼鏡が落ちているならば、目で見て拾えばいいのだ。
ところがどっこい、ヴィクターは吸血鬼にあるまじき視力の悪さを誇る男だった。
夜目が利くといっても、ぶっちゃけ眼鏡がないとぼやけて何も見えないのである。
「眼鏡、眼鏡・・・」
ごん
「っ!?」
額を押さえながら体をずらしたヴィクターは、棺の中を捜索すべくいったんうつ伏せになって体を起こし、今度は後頭部を蓋にぶつけた。
「~~~~!!」
一応気をつけて頭を上げたヴィクターだったが、二度目は当たり所が悪かったらしく後頭部を押さえて棺の中で転がりながら痛みに悶える。
転がった拍子にまた肩やら肘やら膝やら、そして頭をぶつけ、よれよれになったヴィクターが棺から出てきたのはそれから10分後のことだった。
「眼鏡・・・眼鏡~」
あちこちぶつけて何となく泣きたい気分になりながら
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