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~霞月三番目の上天の日~
私は暗殺に失敗した。
その結果ここにいる訳だが、いつまでもこの場所にいる気はない。
失敗した以上、ここに長居しては私が暗殺対象になるだろう。
それは御免だ。私は逃げさせてもらう。
しかし、そう決意を固めた所で、この場所の警備は厳しい。
何とか隙はないものか。

~霞月三番目の中天の日~
昨日食事が出なかったので兵糧攻めか、と身構えていたが今日はいやに豪勢な食事が出た。
昨日は忙しくて私の食事を忘れていたから、お詫びだと言うのだ。当然だ。昨日は私が暗殺未遂を図ったせいで大騒ぎだったのだ。私は毒殺の可能性も考え、隣の牢の囚人に半分食べさせて様子を見てから食べた。意外にも毒は入っていなかった。

~霞月三番目の下天の日~
こともあろうに私の暗殺対象が目の前にいる。
何を考えているのかさっぱりわからない。こちらとあちらを隔てる厳然たる壁はあるものの、私が短剣の一振りでも持っていたら即座に殺せる距離だ。
そして、三日も経っているのに私を狙った刺客の一つもないことに違和感を覚える。
まさかこいつが何かしたのだろうか?
今日は何だかワケのわからないことを言って去っていった。
それにしても、最後の「次の上天の日を楽しみにな」という言葉が気にかかる。もしや、私は五日後に処刑されるのだろうか。

~霞月三番目の厘天の日~
私は処刑されるのかと看守に尋ねると牢番がやたら嬉しそうにしたのでまさか本当だったのか、と肝を冷やしたが、どうやら違ったようだった。「ようやく口を聞いてくれた」だのなんだの言っているが、こいつらは主人同様どこかおかしいのだろうか?
私が沈黙していると肩を落として戻っていったが、交代の時に私と会話した事を自慢げに話していて、相手も本気で羨ましがっているようだった。声を落としていたが、牢獄は声が響くのだ。やはり、主人同様どこか頭がおかしいらしい。

~霞月三番目の干天の日~
おかしい。これだけの日数が経っているのに刺客や毒殺の類いが一切ない。
しかも、私は暗殺未遂をしたというのにいまだ拷問の憂き目にもあわずただひたすら退屈を持て余している。
まるで脱走して下さいと言わんばかりだが、相変わらず牢番たちはとぼけた顔をしておきながら隙ひとつない。
生殺しというやつだろうか。
私は油断をしないよう、見つからないよう、静かに感覚を研ぎ澄ませている。

~霞月三番目の止天の日~
また私の暗殺対象がやってきた。私が無言で睨みつけるとその美しい顔を綺麗に笑ませ、国で最高級の織りの衣が汚れるのにも構わずしゃがみこみこちらを覗いてくる。
私は幾度その白い喉を掻っ切ってやろうと思っただろうか。しかし現実には私の手は鎖に繋がれ、檻から出ることは叶わない。
城から一歩も出たことがないだろうその動作は鍛えられた者のそれではなかったが、しかしそれでも私よりは力があるだろう。背も私より高いのだ。
しかし私はそれで良かった。私は力で殺すのではないからだ。速さと正確さ、鋭さで殺すのだ。
今まで失敗などしてこなかったが、今回ばかりは失敗した。言い訳をするなら、警備が完璧すぎたこと、情報が不足していた事が原因だ。今回の暗殺対象は少しばかり頭がまわり過ぎる御仁だったようだ。まぁ、そうでなければ王などやっていられないだろうが。

~霞月三番目の桃天の日~
また来た。昨日来ておいてまた来るとは、余程暇なのか。
しかもわざわざ食事を手ずから運んできて、椅子まで持ち込んで、長々とこの場に居座る気満々のようだ。
私はいい加減こいつは頭のネジが抜けていると分かっていたが、それでも尚呆れた。まったくもって、何を考えているのかわからない。
側仕えの一人でも連れてくればいいものを、たった一人で囚人の前で話をする。
しかも世間話だ。どこそこの猫が城に入ってきて猫嫌いの女官が大騒ぎして大変だったとか吟遊詩人を招いたら将軍の妹の心を射止めて駆け落ち騒ぎになったとか実は今日の牢番は池の鯉を釣って食べたとか流行の服を選ぶならどれがいいとか何色が好きだとか。
本当に、暇なのだろうか。暇なはずはないのになぜこんなところで話をしているのか。
言うと口元に人差し指を当てるという異国から伝わってきた動作をして、書類仕事から逃げているとのたまった。ここが一番安全だからだのなんだの言っているが、ほとほと呆れた。
結局日が傾くまでそこに居たが、困りきった様子の牢番が何事か耳打ちし、「ではな」と言って出て行った。
そういえば明日はあいつの言っていた次の上天の日だ。何が起こるのだろうか。退屈すると思っていた牢獄生活が賑やかなのがなんとも可笑しくて、私は久しぶりに笑った。

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