変わらぬ日

ＤＤはふと立ち止まってぴくりと耳を動かした。
口の端に行儀悪く引っ掛けたタバコから灰が落ちる。

ドォォ…………ンンン……

微かに、爆発音。
規模は大きそうな音のくせに、こもった様に聞こえにくい。おまけに地面が揺れる。
「・・・地下か」
とりあえずは我が家の水道かガスか電気が止まっていないことを祈るばかりだ。それらは全て地下を通っている。
「そういえば今日は『クリーン』の奴らがテロ仕掛けるんだったか」
それ関係か、とアーテミシアに情報を漁らせながら一人ごちる。
その内に、泡を食った役人どもが犯人の情報を求めて片っ端から情報屋に声をかけて回るだろう。稼げる時に稼がないのは暮らしに困らないボンボンくらいのものだ。そしてＤＤは「嬉しい事」にボンボンではないどころか、何処の馬の骨とも知れぬ男と娼婦との間に出来た、この街でもさして珍しくはない子どもたちの一人だ。餓えた子供たちの主食は廃棄物やネズミなどだが、幸いにして彼はそれらの味を知る事はなかったが――
などと考えていたＤＤも、まさかテロリストの拠点が我が家の向かいのホテルとは思いもしなかったのだが。

結局は、これもこの街の日常だった。