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アクションではありません。
なんか時々至近距離でからかわれてます。
「おや・・・先客がおりましたか」
典雅な雰囲気を醸し出す一団がとある一室に入り込んだ。
「いえ、どうぞお気になさらず」
先客―――黒髪を撫で付け、緑色の瞳をゆっくりと笑ませた優雅な男は泰然とした態度を崩さず一礼した。
傍らには、護衛であろうか、茶髪で、獣の耳という異形を持つすらりと背の高い男が立っている。端整な顔立ちをした二人が並んだその絵画のような光景に、やってきた貴族の男たちは感嘆の溜め息をついた。
「失礼だが、護衛でいらっしゃるのか」
一人の問いかけに黒髪の男は微笑んだ。
「私の護衛です。大切な、ね」
くい、と指先ひとつで護衛を呼び、言葉を窺う顔で少し屈みこんだ彼をぐいっと引き寄せた。
虚を突かれた様子で主人の椅子の背もたれに手をついた彼は、耳を吐息でくすぐられてびくっと体を震わせた。
ちらり、と高貴な緑の瞳を笑ませた視線を受けて、男たちは上品さでとりつくろった、勘繰るような知ったかぶった笑みを浮かべてそっとその部屋を後にした。
足音が遠ざかったころに、DDはおもむろに銃の激鉄を起こして黒髪の男に突きつけた。
「DD、耳弱いんだな」
「・・・・てめぇ殺す」
「まぁ、見たまんまの弱点だが。仕方ない、ああしないと世間話で長々とこの部屋に居座られただろうしな」
DDはひとつ舌打ちをして銃をしまった。
「同じ手をもう一回使いやがったら首を切り取ってカラスの餌にしてやる」
しかし幸いにして、人が来る事はなかった。茶色に染めた髪をがしがしとかき乱し、DDはどっかと高級そうな木材を使ってある椅子に座った。
「よくあんな気分わりぃ真似できるな、オイ」
「貴族の真似ごとの事か」
「ああ」
「腹芸の出来ないDDサマとは根性と忍耐が違いましてね」
「あんなのと一緒にされるくらいならゴミクズ呼ばわりされる方がまだマシだね」
「ゴミと大して変わりないものな、おれ達みたいな連中は」
「ああ、ろくでもないクソ野郎どもだな」
「大して変わらないんじゃないか?」
「気分だ、気分。流しとけ。」
アーテミシアがもぞもぞとDDのポケットから顔(?)を覗かせる。
「アーティ、まだ不味い。潜ってろ」
言われた途端、アーテミシアはひゅいんと潜った。
ぴくっとDDの耳が動き、近付いてくる足音を捉えた。
「誰か来るぜ。・・・歩き方からして素人、男だな」
「髪直せ」
櫛を投げて寄越されて思いっきり嫌な顔をするが、手早く髪を梳る。「あー面倒」と顔にばっちり書いてあるが。
「さっきの奴だ。何しに戻ってきたんだか」
「覗きに来たんだろう」
「は?」
「さっきあいつらが出て行ったのは「これからここでナニするので出て行って欲しい」的な目配せをしたからだ。濡れ場を覗きに来たんだろ。」
「ってめ、何勝手にそういうことにしてやがる!?」
「時間がない、ネクタイ外してシャツのボタン開けろ」
「・・・・・・オイ・・・・」
すごく嫌そうな顔をしながらネクタイを外すDDをちらりと見、「仕事だ、割り切れ」と引っ張り寄せた。
「・・・なんか楽しそうに見えるんだけどよ」
「仕事は楽しまないとな。お前は楽しくないか」
「俺は猿芝居より刀振ってる方が楽しいんだ。そのケもねぇのに楽しいワケねーだろ」
「今時そんなことを言う奴がいるとは思わなかったな。まるで前時代のアンティークだ」
くっくっく、と笑う『仮』相棒が立ち上がってDDに長椅子に座るように目で示す。
足音はすぐそこに迫っていた。
「!あの変態、透視装置使ってやがる!」
壁一枚を通した向こう側の景色が白黒で見えるという馬鹿高価い装置だ。世界に5個しかないとされていたが。
DDはその独特な作動音をその高性能な耳に捉えていた。
「!?おいっ!」
いきなり引き倒されて首元に吐息をかけられ、DDは鳥肌立った。
「覗かれてるんだろ、それらしくしてろ」
「はあ!?っつか何で俺が下、・・・っ!」
この街には異形が溢れ返っているが、DDのように動物に似た異形を持つ者は、その部分にやたらと神経が集中しているためか、他のより感覚が鋭敏だ。
腕利きの便利屋を押し倒せる機会などこういう事態でもない限りありえないだろう。一種の役得を感じながら、『仮』相棒である男は苦笑した。口を引き結んで明後日の方向を向いているDDを見下ろしながら、彼は覗いている相手へのアングルを考慮しながら体の位置を変えた。